クンデラの小説ではない。
存在の耐えられない軽さ。そう、わたしのことです。わたし軽いんです。
わたしは係長。50人いる課内で序列6番目。席次だけ見ると3番目にすわっている。
こういうふうに言うと、序列を気にするイヤなヤロウに思われるかもしれないが、その逆である。
組織内の序列などの話題からは、積極的に遠ざかりたいタチだ。
でもね、わたしの席次をいわゆるポストとして見る人がいるのは確かで、わたしはそれがとってもイヤなのだ。人事異動が待ち遠しい・・・。
わたしの存在は軽い。
係長はモロに中間管理職だ。プレイヤーでもなくマネージャーでもない、この微妙な立ち位置。
担当する仕事は持っているが、少々特殊な仕事で課内よりも人事課とのやり取りがほとんどである。なので、我が課のいわゆる業務部門に直接手を出すことはほとんど無い。
人事課の別室にひとり勤務している雰囲気すらある。
ほとんどの書類を決裁しているが、内容を確認しているのみで業務に直接手を出すことはほとんど無いのだ。
しかしながら、説明責任は伴う。
部下がやっていることは、当然わたしにも責任がある。組織では当たり前であるが、このさじ加減が難しい。
承認はするが決裁権はないので、結局は上司の意向なのだ。
わたしが良かれと思って部下に指示を出しても、上司に蹴り返されることがよくある。
シュートを打たれるくらいはましな方で、たいていドロップキックだ。
上司の意向を汲み取るのが上手い人っているよね。だが、わたしはまったくダメなのだ。いくら上司の意向を汲もうとしても返り討ちにあうことがしばしば。
上司とはできるだけ関わりたくない。サラリーマン失格である。
書いていてつまらなくなってきた・・・。こんな文章を誰が読むというのか!!!
いまは昼メシ時である。弁当を食べ終わって、休憩時間中ではあるが仕事をしようか、どうしようか迷いつつ、結局こうして書いている。
目の前ではPCの顔認証がピカピカしている。わたしが正面を向かないから認証できずにいる。
何度も何度も顔認証しようとして「認証できませんでした」を表示している。
なんだかなぁ・・・ボンヤリと薄汚れた天井を見上げてみる。
窓の外はものすごい雪だ。おちるスピード感がもはや雪とはいえない感じだ。そして横殴りである。風で雪が巻いている。
それにしても人事課のヤローめ!また急ぎの仕事を持ち込みやがった!こんなことばかりしてると、グレちゃうぞ!コノヤロー!!と頭の中で叫んでみるが、何も言えず、静かにひとりたたずむ昼休みである。
存在の軽さを感じてしまう。
こちらの都合などおかまいなしに、あまりにも簡単に今日の16時までに!とかヘラヘラ言ってんじゃねーよ!持ってきたのついさっきじゃねーか!!こんなややこしい案件!!!とひとり内心やさぐれてみたりする。今日は金曜日なのにね。
ドス黒くモヤっとした気持ちのやり場がない。ふつふつと黒いかたまりが胸に迫り上がってくるが、目を閉じて腕を組み、じっと耐えてみる。
どうせ、わたしなどいなくても組織は回るのだ。休みを申請したところで誰も困ることはない。上司がイヤな目でわたしを見るだけ。休みを申し出たときに、チッ!とか言うのマジ勘弁してほしい。
そんなことを考えながら、ため息ついていたら昼休みも後半にさしかかっている。午後のゴングと同時にデスマッチの再開である。
はたして人事課のヤローをやっつけて勝利をおさめることができるのか・・・。今日を無事に終えることができるのか。先が思いやられる。
そういえば、昨夜帰宅してクタクタで2階に向かっていたところ、ネコに足をつかまれて階段から転げ落ちそうになった。
ギョッとして振り返ると、何事もなかったかのように毛づくろいをしているのである。すまし顔で、ボク何も知らないよ、といった風情である。
こんなところにも存在の軽さを感じてしまうのである。
そんな仕打ちを受けても、ゴロゴロのどをならして布団に入ってくると優しく受け入れてしまうのだ。
存在の耐えられない軽さ。
本日もお読みいただきありがとうございました。
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