「さとりをひらいた犬」本当の自分、本当の自由とはなんなのか?

こんにちは。日々悩み続ける胡桃丸です。

本日も胡桃丸のお部屋へようこそいらっしゃいました。

今回は「さとりをひらいた犬」という本を紹介します。

  • 題 名 「さとりをひらいた犬」ほんとうの自分に出会う物語 2021年12月28日 初版発行
  • 著 者 刀根 健(産業カウンセラー、TAマスターコンサルタント)
  • 発 行 SBクリエイティブ株式会社

主人公のジョン(猟犬)が「ほんとうの自分」「ほんとうの自由」を探して旅に出る物語です。

そして主人公のジョンを通じて、人生に奇跡を起こすたった一つの方法「ほんとうの自分」に目覚めることを私たちに教えてくれる物語です。

今後の人生をどう生きるべきかを悩んでいたわたしは「ほんとうの自分」を探し求めるジョンの姿を自分自身に重ね合わせ読んでいました。

ジョンの苦悩は、今を生きる人生に迷うあなたの悩みにも重なる物語です。

読み終わった後には、すがすがしさと前向きなあたたかい感覚が胸を満たし「さぁ、これから前に進もう」という気持ちになりました。

自分の生き方について悩むすべての人に読んでいただきたいお話です。

ほんとうの自分とはなんなのか?

ほんとうの自由とはなんなのか?

それを知りたくはないか?

さとりをひらいた犬 P.1 刀根 健 著  SBクリエイティブ株式会社 刊
目次

第1章 旅立ち  魂の声を聞け

冒険への誘い

優秀な猟犬ジョンは、ある日主人が撃った狼のダルシャと出会います。

ダルシャはジョンに「ほんとうの自分」と「ほんとうの自由」を考えるきっかけを与え息を引き取りました。

ジョン、“生存している“と“ほんとうに生きている“とは、存在の形態が違うのだ。いまの君は生存しているだけだ。生きてはいない。それに気づくんだ

さとりをひらいた犬 P.22 刀根 健 著  SBクリエイティブ株式会社 刊

ジョン、「魂の声」を聴いてみるんだ

さとりをひらいた犬 P.23 刀根 健 著  SBクリエイティブ株式会社 刊

ご主人様に従順だったジョンはその日を境に変わりました。頭の中にダルシャの声が響いてきて狩りにも熱中できなくなります。

ある朝ジョンは、同僚で親友のハリーに悶々とした心の葛藤を打ち明けましたが、ハリーはジョンの考えを完全否定します。

余計な知恵をつければつけるほど不幸になっちまうってことなんだよ。苦しくなっちまうんだよ。何も知らない方ほうが幸福なんだ。考えないほうが幸せなんだよ。

さとりをひらいた犬 P.31 刀根 健 著  SBクリエイティブ株式会社 刊

俺たちは考えちゃいけねぇんだよ。俺は何かを知って不幸になるより、何も知らないで眠ったままの幸福のほうがいい。お前もそうだ、悪いことは言わねえ。余計なことは考えるな、ジョン

さとりをひらいた犬 P.32 刀根 健 著  SBクリエイティブ株式会社 刊

ジョンは自分の魂に向かって語りかけます。ジョンはハリーの言うことが常識的には当たり前だと思いながらも、胸の奥からせり上がってくる高鳴りを抑えきれず走り出します。

ジョンには理屈を超えた確信に近い理解がありました。

ジョンは後を追いかけてくる仲間やご主人様を振り切って全速力で走りました。ほんとうの自分とほんとうの自由を探すために。

いまの僕は自由じゃない気がする。そう、いまの僕はほんとうの僕じゃない。僕は自由になりたい。ほんとうの僕になりたいんだ

さとりをひらいた犬 P.33 刀根 健 著  SBクリエイティブ株式会社 刊

第2章 北の谷  身体・エゴ・魂

魂こそが本質

ジョンは北の谷に到着します。

ジョンは北の谷の主、コウザと出会いハイランドの話を聞きました。

コウザは言います。ハイランドはほんとうの自分、ほんとうの自由を理解できた者のみがたどり着く場所、と。

ジョンの強い意志と覚悟を理解したコウザはジョンに、命あるものの成り立ちを説明します。

わしらは三つの存在が一つになった存在。三位一体、それがわしらじゃ。その一つ目は身体、肉体じゃ。・・・二つ目は自我、エゴじゃ。・・・最後の三つ目は魂、スピリットじゃ。

さとりをひらいた犬 P.59,60 刀根 健 著  SBクリエイティブ株式会社 刊

身体とエゴだけでも“生存“していくことはできる。多くの人間たちはこれじゃ。この二つしか機能しておらず、魂が死んでおる。

肉体は魂の乗り物なのじゃ。エゴは御者に過ぎぬ。魂こそがわしらの本質なのじゃ。

さとりをひらいた犬 P.60 刀根 健 著  SBクリエイティブ株式会社 刊

これを聞いたジョンは一晩考えます。そして次の朝、コウザからハイランド行きを勧められました。

ジョンは走り出しました。

第3章 ベレン山  恐れを見抜く

試練、恐怖との闘い

マフィーたちとの出会い

ベレン山に向かっていたジョンは、道の途中でジョンの主人の狩り仲間のもとにいた猟犬に出会います。

猟犬の名はマフィーといって、仲間の3匹と共にいました。ジョンがマフィーにベレン山へ行くことを告げると、ベレン山には赤い魔獣が住んでいて、マフィーたちのボスであったガジョが赤い魔獣に襲われ死んでしまったといいます。ガジョは完璧なリーダーといえる存在で、多くの犬の目標とされる存在でした。

ジョンはガジョが死んでしまったことをにわかには信じられませんでした。

あのガジョですら抜けられなかったあそこを、お前が抜けられるはずがない。しかもお前は独りぼっちだ。お前をこの先で待つものは“恐怖“そして“死“だ

悪いことは言わない。ベレン山に行くのはやめておけ。ここから引き返せ

さとりをひらいた犬 P.72 刀根 健 著  SBクリエイティブ株式会社 刊

ジョンは怯みましたが、ゆっくりと目をつぶり自分の魂の声を聞きます。

すると言葉にならない声が返ってきて、ジョンはそれが「このまま進むんだよ」と言っているように感じ、引き止めようとするマフィーを振り切ってベレン山に向かいました。

赤い魔獣と恐怖

マフィーたちと別れて二日後、ジョンは麓から黒々とそびえ立っているベレン山を目の前にしていました。

ふと視線を上げると巨大なクスノキが目についたためジョンはそこに向かいますが、ただならぬ気配を感じて立ち止まってしまいます。

行くべきか、戻るべきか・・・?

僕のエゴは逃げろと言っている。でも、僕の魂は行けと言っている

これが・・・これが、“恐怖“・・・

さとりをひらいた犬 P.76 刀根 健 著  SBクリエイティブ株式会社 刊

ジョンは警戒レベルを最大に上げて前進します。クスノキを回り込むと幹の陰に赤い魔獣がいました。赤い魔獣とは赤黒い剛毛の大きなクマでした。赤い魔獣は寝そべって目をつぶっていましたが、ジョンが正面に立って凍りついたように動けないでいるとゆっくりと目をあけました。ジョンは動かなくなった身体を必死に動かし、ほうほうの体で赤い魔獣から逃げ去ります。

ジョンは赤い魔獣の恐怖におののき、ベレン山の麓を五日間もぐるぐるとさまよっていました。五日目の夜、ウトウトしていると、どこからかダルシャの声が聞こえてきます。

お前さんはいま、“恐怖“と“不安“に囚われている

いまのその状態がお前さんが感じていたい“ほんとうの自分“だと感じたなら、そのままそれを抱えて生きろ。それがお前さんのほんとうになる

しかし、それを感じながら生きている自分自身が“ほんとうの自分じゃない“と感じたのなら、その“ほんとうじゃない自分“と向き合うんだ。逃げては行けない

さとりをひらいた犬 P.86,87 刀根 健 著  SBクリエイティブ株式会社 刊

逃げれば逃げるほど“恐怖“と“不安“は追ってくる。いずれ、それに捕まって、そのほんとうじゃない自分が、ほんとうの自分に入れ替わってしまうんだ

さとりをひらいた犬 P.87 刀根 健 著  SBクリエイティブ株式会社 刊

ジョンは次の朝、覚悟を決めて巨大なクスノキに向かって歩きはじめました。

クスノキの下に赤い魔獣がいました。ジョンは必死に恐怖を無理やり押さえつけ、一歩、一歩、歩き、赤い魔獣の前に立ち尽くしました。しばらくののち目を開けた赤い魔獣にジョンは話しかけます。

・・・ハ・・・ハイランドへの道を・・・お・・・教えていただきたいのですが・・・

ぼ・・・僕には責任がある。だから・・・だから僕は絶対に、絶対にハイランドへ行かなくちゃいけないんだ

さとりをひらいた犬 P.97 刀根 健 著  SBクリエイティブ株式会社 刊

赤い魔獣は自分の名をゾバックと名乗りました。

ゾバックはジョンに恐怖など存在しないことを説明します。恐怖が魂の声をかき消してしまうということも。

大勢の者たちは(中略)自らが創り出した“恐怖“という影によって未来におびえながら生きている。恐怖は自分の思考が創り出した幻想だとも気づかずに。

恐怖の中で生きるということは、幻想の中で生きることと同じ意味なのだ。この幻想に気づくこと、幻想を見抜くこと、それがほんとうの自分への、ほんとうの自由への第一歩なのだ

さとりをひらいた犬 P.107 刀根 健 著  SBクリエイティブ株式会社 刊

ゾバックはジョンに物事の順序、流れを受け入れ流れに身をまかせるよう諭しました。

第4章 アマナ平原  エゴの牢獄

予言者クーヨとの出会い

ジョンはアマナ平原へ向かう途中、大きな廃屋で雨宿りをしました。そこで赤い魔獣と闘って命を落としたはずのガジョと再開します。しかしジョンの目の前にいたのは、かつての精悍で強靭な肉体を持つガジョではなく、ガリガリにやせこけ全てをあきらめたような暗くよどんだ目をしたガジョでした。

ガジョは赤い魔獣との闘いから逃げのびたことを恥じ、生きる気力を無くしていました。ジョンはそんなガジョをなだめ説得し、アマナ平原にあるチカルという街までの道案内を頼みます。

チカルに到着した二人は、予言者さまと呼ばれるネズミ、クーヨと出会います。

クーヨはほんとうの強さとは何かとガジョに聞きますが、ガジョは答えることができません。

ほんとうの強さとは、自分が弱い存在だと知っていることじゃ。わしらは光と影の合わさった存在なのじゃ。光の部分だけしか見ていないと、おんし(お前)のようなことになる。光が強くなればなるほど、影も強くなるのじゃ。そこを見ないように避けておると、おんしのようにいきなり影につかみ取られ、闇の中に引き摺り込まれるのじゃよ。光と影、その両方が合わさった存在が自分だと知ること、これがほんとうの強さを連れてくるのじゃよ。

さとりをひらいた犬 P.159,160 刀根 健 著  SBクリエイティブ株式会社 刊

エゴのやかましい声が静まると、穏やかな波のように、ほんとうの自分自身が現れる。そして時折、その隙間からメッセージがやってくる。これが存在の声、魂の声じゃ。

さとりをひらいた犬 P.166 刀根 健 著  SBクリエイティブ株式会社 刊

ジョンとガジョはハイランドで再開することを約束し。ジョンはその先のレグードゥの森へ、ガジョはかつての仲間たちがいるベレン山へ向かいます。

第5章 レグードゥの森  目指す者たち

敵との遭遇

ジョンはレグードゥの森へ向かう途中、ダッジと名乗る一羽のフクロウに出会います。ダッジから「いま森にはたくさんの人間がいっぱいいて、行ったらひどい目にあう」と忠告されます。

レグードゥの森に近づくにつれて、物々しい雰囲気を肌で感じるようになってきます。ジョンは森の近くで人間6人と犬30匹の大集団を目にします。ジョンはその大集団を尾行し、犬の集団を統率する指揮官シーザーと出会い、そして集団が森を目指す目的は「不思議な力を持った動物を狩ること」だと知ります。

シーザーはジョンの考えが間違っていると主張します。

我々は人間の狩りの手助けをしているのではない。我々が狩りをしているのだ。人間は、我々の付属物、備品に過ぎない

さとりをひらいた犬 P.189 刀根 健 著  SBクリエイティブ株式会社 刊

ジョンはシーザーたちとレグードゥの森まで同行し、森に到着したところで別れました。

森に入って三日目、ジョンがルーン湖のほとりで眠っていると、真夜中に唐突に声をかけられました。目を開けるとそこには二匹の大きな白い狼が立っています。狼たちの名はゲトリクスとヴェルキンといいました。二人は女神シャーレーンの守護者であると言い、ジョンをシャーレーンのもとに案内しました。

第6章 女神シャーレーン  ゆるしと癒し

仲間、敵、そして試練

ジョンは二人に案内され、薄暗い森の洞窟の中で光る白馬シャーレーンに出会います。シャーレーンは、かつてジョンが人間と共に殺した西の森の王、白帝の妹でした。

シャーレーンの持つ不思議な力により、ジョンの無意識の奥にしまい込んで見ないようにしていた苦しみや罪悪感が癒やされました。

これでジョンはハイランドに向けて前に進むはずでしたが、レグードゥの森に来ている人間と猟犬たちからシャーレーンを守ることを申し出てしばらくここに残ることにしました。

シャーレーンは不思議な力で傷ついた動物たちを治療することができました。ある日シャーレーンは傷ついた雌鹿を治療しようとしますが、それはシーザーが仕掛けた罠でした。

シャーレーンたちは一気に走ってシーザーたちから遠ざかります。途中ゲトリクスがシャーレーンを逃すために追っ手の前に一人で立ちはだかります。

勇猛果敢に闘ったゲトリクスでしたが一対多数の闘いで敗れ最期の時を迎えます。ゲトリクスに向かって「哀れだ」と言い放つシーザーに対し、ゲトリクスはこう言い残し息を引き取ります。

ほんとうに大事なことは“どう生きたか?“なのだ・・・。死ぬとき、それはその者の“存在“が、まさに、問われるときなのだ。何を持っていようと、どんな地位にいようと、どんな実績や勲章や証があろうと、そんなものはいっさい関係ない。あっちの世界には、そんなガラクタは持ってはいけないのだ。死ぬときに問われるのは、「どう生きたのか?どういう存在であったのか?」そ・・・それだけだ

さとりをひらいた犬 P.241 刀根 健 著  SBクリエイティブ株式会社 刊

その直後、人間たちがシーザーたちの元にやってきます。人間はゲトリクスの胸に無造作にズドンと銃弾を打ち込みました。

そして人間はシーザーに言いました。「ひどい怪我を負ったやつは面倒だから、明日の朝に処分する」それは、昨日まで仲間だった犬たちを面倒だから撃ち殺すということでした。

シーザーは混乱します。我々と人間は対等のパートナーではなかったのか?我々はこんなにも簡単に捨てられ、殺される程度の存在だったのか。

闘いの最中にゲトリクスが言った言葉がシーザーの脳裏をよぎりました。

お前は、人間たちにコキ使われ、狩りをするという役割に、しがみついている

お前は逃げているんだ。「自分自身」から逃げている・・・

さとりをひらいた犬 P.245 刀根 健 著  SBクリエイティブ株式会社 刊

シーザーは光を失ったゲトリクスの目を見つめ、ふとジョンの言葉を思い出します。

僕達の本質は自由だ。僕達は人間に飼われ、人間に尽くすために生まれてきたわけじゃない・・・

さとりをひらいた犬 P.245 刀根 健 著  SBクリエイティブ株式会社 刊

第7章 最後の闘い  すべてはひとつ

最大の苦難

シーザーは深傷を負った部下たちの前で静かに座っています。彼らは明日の朝には撃ち殺されてしまいます。

シーザーは仲間の犬たちに自分の作戦ミスでこうなってしまったことを謝罪しましたが、皆はシーザーを司令官として称えます。

そんなに謝らないでくれ。俺たちはあんたの下で働けたことを誇りに思ってるんだ

そうだ、シーザー、あんたは俺たちの誇りなんだ

司令官のおかげで、俺たちは伝説になれたんだから

さとりをひらいた犬 P.255 刀根 健 著  SBクリエイティブ株式会社 刊

夜明け間近、東の空がだんだんと明るくなってきたころ、そこにジョンとシャーレーン、ヴェルキンが現れました。

シャーレーンは傷ついた全ての犬たちを癒すと言います。シーザーはシャーレーンの言葉が理解できず攻撃的な視線を投げつけ「殺すぞ」と言いますが、シャーレーンは(かまいません!)と毅然と答え、犬たちの治療を始めました。

そのとき人間の一人がシャーレンに気づいてしまいます。別のテントからもあわてた人間たちが銃を片手に続々と現れシャーレーン近づいてきます。

このままではシャーレーンが撃たれてしまう!間一髪のところでシーザーの声が響きました。数匹の犬たちが一糸乱れぬ動きで人間たちに向かって走っていきます。シーザーが冷静に指示を出します。

第一小隊、右から順に当たれ!足と銃を狙え

次、第二小隊行け

さとりをひらいた犬 P.261 刀根 健 著  SBクリエイティブ株式会社 刊

みな傷だらけになりましたが激闘の末、人間たちは誰一人いなくなりました。

シーザー軍団は解散し、皆それぞれの思うところへ出発していきました。

ジョンはシャーレーンが教えてくれたウルム山の中腹にあるシルシュの大杉へ向かいます。大杉の下に住むレドルクという年老いた狼がハイランドへの生き方を教えてくれるはずと、シャーレーンが教えてくれました。

第8章 ウルム山  ほんとうの自分、ほんとうの自由

師との出会い、最後の試練

ジョンがシルシュの大杉に到着して上を見上げると、頭上の枝に静かに座っている年老いた狼の姿が目に入りました。

ジョンがその年老いた狼にレドルクか?と聞くと、レドルクはよくわからない答えを言います。

うむ・・・確かにわしはレドルクと呼ばれている。だが、レドルクというのは、一つの名前、称号、表現、単語でしかない。ここにはいかなる実態も存在してない

さとりをひらいた犬 P.308 刀根 健 著  SBクリエイティブ株式会社 刊

杉の木にのぼり、レドルクの横に座ったジョンはレドルクにハイランドへの道を尋ねましたが、レドルクはたった一言、静かに言います。

ハイランドという場所など、ない

さとりをひらいた犬 P.314 刀根 健 著  SBクリエイティブ株式会社 刊

それを聞いたジョンは言葉に詰まります。そして、どうしたらよいかと尋ねるジョンに向かってレドルクは「何もしなくていい」と言います。数日間、何もせずにただ座っているだけの時間はジョンを焦らせ、ジョンの頭の中には、レドルクにだまされているんじゃないか、という疑念の声がどんどん湧いてきました。

来る日も来る日も同じことの繰り返しでジョンの頭の中は欲求不満で爆発寸前でした。そして不平や不満を心の中で言い続け一月が過ぎようとしていたときジョンは思い切ってレドルクに聞いてみました。

僕は自分が何をしているのかわかりません。こうして座っていることに意味を見出すことができません。僕は絶対にハイランドへ行かなくちゃいけないんです。みんなとの約束なんです。でも、どうしていいのかわかりません。僕は、苦しいです・・・

さとりをひらいた犬 P.327 刀根 健 著  SBクリエイティブ株式会社 刊

レドルクは慈愛に満ちた目でこう答えます。

苦しい・・・よきかな、よきかな。その苦しみを見つめなさい。その苦しみを上から眺めなさい。その苦しみの発現を見張りなさい。それが君をハイランドへ導く灯になるじゃろう

さとりをひらいた犬 P.327 刀根 健 著  SBクリエイティブ株式会社 刊

ジョンは初めて自分の内側を、苦しみを見つめることをやってみました。

何度も何度も自分の内側を見つめているうちにジョンは頭の中にエゴの声が湧き上がってくることに気づきます。そしてその声はしつこく叫んでいました。

ハイランドへ行きたい!早くハイランドへ行きたい!

ハイランドへ行きたい!僕は、ハイランドへ行かなきゃいけないんだ!

さとりをひらいた犬 P.342 刀根 健 著  SBクリエイティブ株式会社 刊

しばらく経ったある日の夜、レドルクに様子を尋ねられたジョンが答えます。

言葉で説明するのは難しいんですけれど、なんとなくわかってきました

さとりをひらいた犬 P.344 刀根 健 著  SBクリエイティブ株式会社 刊

ジョンは自分自身と、そうではないものの区別ができるようになりつつありました。

レドルクは満足そうにほほえみ、ただひたすらありのまま自分の心を見つめることをジョンに教えます。

それからジョンは半年ほど木の上に座り続けました。

そしてハイランドという場所など、どこにもないことを知ります。自分自身がハイランドだったということを。

この世界の全て、自分が世界そのものだと感じて、そこにジョンはいませんでした。空間も樹々も湖も、リスやウサギも、存在する全てを包み込みながらジョンという存在から愛おしさと慈しみが大波となって溢れ出ていました。

まとめ

ジョンは狼のダルシャとの出会いをきっかけに「ほんとうの自分」「ほんとうの自由」を求めて旅に出ました。

旅の途中でいくつもの困難を乗り越え、仲間と出会い、師と出会い、ほんとうの自分、ほんとうの自由を知ることになります。

ジョンをはじめこの物語に登場する者たちからは、私たちはなんのために生まれ、どう生きるべきなのかということを考えさせられました。

現代社会に生きる私たちに日々つきまとう悩み、人間関係、仕事、お金、社会的立場などに振り回され、不安や恐怖を感じながら生きる人生を変えるきっかけになる物語です。

自己の内側を見つめ、物事に執着せず、ただひたすらありのままに自分の心を眺め続けることを日々意識して生きたいものだと感じました。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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